DJステーション@ビアガーデン

大学最後の夏、就職もイベント屋で食べていこうと決めたので、

とにかく、様々なイベントをアルバイトでもいいので、経験しようと知り合いの

イベント会社から僕でもできるアルバイトを紹介してもらっていた。

バブル全盛期のビアガーデンでは集客するために様々なイベントが企画されていた。

僕が派遣されたのが、天王寺の商業ビルの屋上のビアガーデン。

集客のイベントとして、ディスクジョッキーのお喋りと音楽を流すサービス。

DJを受け持っていたのはアナウンサーの卵たち。アナウンス学校の生徒さんだ。

僕は、フロアアシスタントという役目。まぁ、いわゆる何でも屋みたいなもんだ。

ディレクターと僕とDJの女性3人が毎晩ビアガーデンにセッティングされた仮設のDJボックスで、お客さんにおしゃべりやリクエスト音楽を楽しんでもらうのだ。

DJの構成はディレクターが考えて、僕は流す音楽のレコードの準備、そして進行に合わせたネタの収集。インターネットもスマホもない時代、情報はそれだけで貴重なネタだった。

とりわけ、「プロ野球速報」は電話で途中経過情報を調べて、速攻で伝えなければならない。特に、阪神タイガースの試合経過は皆が知りたがっていた。

勝っている時はいいのだけれども、負けている時はその矛先は僕に向かってくる。

「ボロ負けしとるやないか、なんとかせんかい!」

兎にも角にも、酔っ払い相手なので、理屈は通らない。ひたすら謝るしかない。

(なんで僕が謝ってんねん)

トラブルが起こらないようにするのがアシスタントの役目でもあるのだ。

アルバイトだけれども、お客さんにはそんなことは関係ない。

エンディング曲はスティービーワンダーの「心の愛」

今でも、「心の愛」を聞くと、阪神ファンの心無い罵声、暑い夏の40年前のビアガーデンを思い出す。

心の中に刻まれた、イベントのワンシーン。