読書考~空想の道標~
僕が読書に勤しむようになったのは、いつからだろうか、と遠い過去を振り返る。
小中学時代は、漫画本が真っ盛りの時で、少年サンデー、少年ジャンプ、少年チャンピオンと、週刊漫画雑誌が毎週発売されていた。僕はそろばん教室の待合ベンチでそれを貪り読んでいた。漫画がいろんなことを教えてくれた。友情や助け合い、善悪など、教科書には載っていない人生を漫画を通じて感じていた気がする。
しかしながら、中学生にもなってくると、思春期に突入し、それらの漫画を認めつつも、背伸びをしたくなる時期。深夜放送を聴きながら、大人への憧れを抱いたりしながら、もっと違う世界を知りたくなっていった。
何がキッカケか忘れてしまったけれども、初めて読んだ文庫本が、森村誠一さんの「人間の証明」か「野生の証明」だったと思う。映画の番宣で高倉健さんと薬師丸ひろこさんのCMを見たからなのか。それから、森村誠一さんの本を片っ端から読み、横溝正史さん、松本清張さんなどミステリーにハマっていく。そのうちもっと違うジャンルということで、純文学の夏目漱石、川端康成と、読書作家が広がっていった。
僕が通っていたそろばん教室の前に「井高野書店」という、本はもちろん、文房具などを売っている本屋があったので、そろばん教室に通いつつ、いつも「井高野書店」の文庫本コーナーを見て回るのが、楽しみになっていた。
漫画で教えてもらった人生を、今度は文庫本が教えてくれた。文字だけの物語が僕の想像を掻き立てたのも、ハマった理由の一つだ。思春期は何かと空想癖がある時期でもあり、見たことのない、知らない世界を時にワクワクしながら、時に怯えつつ夢中になって読んだ記憶がある。
本は僕の空想旅の道標だった青春時代を、今思う。