北の大地のアルバイトー3
北海道・豊頃町は帯広の南東に位置する小さな町です。
集合日に役場に着いて、その夜には、歓迎会がありました。
ジンギスカンを食べたのは、その日が初めてでした。
私のお世話になる、酪農家は、牧草地をいくつも持っておられて、その牧草を刈取り、乾燥させて、サイロに収納することです。
また、私がお世話になる農家には、同じ大学の同級生もお世話になっていました。
1ヶ月寝食を共にすることになります。
家の周りには、見渡す限り牧草地が広がっています。
隣近所がない、、、いや実際はあるんですが、遙か遠くにしか、見えない。
とにかく、広い草原と高く広い空に圧倒されながらの作業です。
親父さんが、牧草刈りのトラクターで草を刈ります。刈った後は、しばらくそのままにして、乾燥させます。
数日間天日干しして乾燥した牧草を、今度は、我々が4トントラックに積み込んでいきます。トラックに積んだ牧草はその後、大きなサイロに収納されます。貴重な冬場の牛や馬達の食料になります。
そんな行程なので、最大の敵は雨です。雨が降ると、刈り取ることもできない、ましてや乾燥した牧草も湿って収納できない。とにかく、雨が降らないことを祈るのみです。
毎日、NHKの天気予報を見ることは、農家にとっては日課になってます。
とは言え、キツイ毎日の作業です、我々アルバイトにとっては、雨の日は休みです。
時折、天気予報で雨マークがあると、心のなかで少しホッとした覚えがあります。
雨で作業ができない日は、農家の親父さん、叔母さんが北海道のいろんな所に連れて行ってくれます。
襟裳岬、阿寒湖、摩周湖、網走、など本当に見所満載の北海道を満喫させていただきました。
しかし、雨が降りすぎるのも困ったことで、その分晴れの日は、夜明け前に起きて、陽が落ちるまでたっぷり働きます。休みの作業分を取り戻さないといけません。
結構、これがキツイ。若さだけで、乗り越えられたような気がします。
本当に、体力がいる仕事ですし、若者不足は深刻な問題です。その頃から、どれだけ改善されたかどうか、わかりませんが、農業の労働力不足は深刻なことと思います。
はっきり言って、楽な作業では決してありません。農家と牧草地の往復です。食事以外は風呂入って、寝るのみの生活。
さすがに、疲れている中で、同じ部屋の同級生とも、話はしなくなります。プライベートがないことがますます、疲労度を増す原因とも言えます。今から考えると、ストレスというものでしょう。
そんな1ヶ月も、振り返るとアット言う間に過ぎ去りました。
夏であっても、朝はしばれます、ストーブを焚くことは当たり前のようです。霧が大地を覆います。今ほど天候不順ではないですが、農家にとっては天気との闘いです。1年の食い扶持を春から夏にかけて稼いでいると言っても過言ではない。
私は、19歳の夏にこの経験ができたことは、本当によかったと思います。自分で体験しなければ、何も感じなかったと思います。
とにかく、大学時代は、チャレンジの時期だった気がします。