でっかいどう北海道
大学1年生の夏、今から41年も前になるけれども、私は北海道の酪農家で1カ月間住み込みアルバイトを経験した。
浪人生活から無事に大学生活が始まった時に、「教員免許」を取得する、「運転免許」を取得する、という2つの目標以外は、とにかく、なんでも経験したいという、今考えると、なんだろう良いように言うと好奇心の塊のようなエナジーが沸々と自分の身体中に湧き出ていた気がする。浪人生活で圧迫されていた「自由にチャレンジしたい気質」が一気にアドレナリンのように出てきたのだ。大学生活の4年間は勉学はもちろんだけれども社会に出る前のモラトリアムと言ってもいいのかどうかわからないけれども、なんでもチャレンジできる時期のような気がしたのだ。
大学生にアルバイトを紹介する「学生相談所」で見つけたのが、北海道での住み込みバイトだ。職種は、「牧草地での牧草刈り」や「昆布漁のお手伝い」「牛のお世話」などとにかく、農家さん・漁師さんのお手伝いで、いわば体力勝負の力持ち作業だ。往復の交通費は支給され、日当はあまり高くはなかったけれども、3食、昼寝付の条件、お金よりもこんな機会は今しかできないと、早速申し込んだ。
私が行ったのは、北海道の道東の豊頃町という町で、全国から10数人の大学生がアルバイトにやってきていた。初日は、役場の駐車場で歓迎会のジンギスカンをご馳走になって、皆それぞれお世話になる農家さん宅へ別れて行ったので、結局その後、彼らとは再会しないままであった。近所の農家のおっちゃんやおばさんが集まってきて、ご馳走いただきながら、家カラオケで歓待していただいた。そんな楽しいひとときも、仕事が始まるとなかなかキツイ。
北海道の朝は早い、いや農家の朝が早いのだろう。陽が昇る前に起き出して朝食をいただき、車で牧草地に向かう、明るくなるのを待って、牧草を刈っていく。草刈機の運転の仕方を教えてもらいながら、だだっ広い牧草地を縦に、横に走っていく。刈り取った牧草は日干しするので、そのまま次の牧草地へ。毎日天気予報と睨めっこだ。雨が降って牧草が濡れる前に、サイロへ収納していく。冬場の牛たちの餌にするために、夏に溜め込んでいくということ。
牧草を刈り取り、日干しした牧草をトラックに積み込んで、サイロに収納していく。今考えると何ヘクタールの広さだったのだろうか。何日も何日も、刈り取ってはサイロに運んでいた日々を考えると相当な広さの牧草を刈ったのだろう。
1カ月の住み込みバイトも無事終わって、その後「学生企業」を経営することになるのだが、アルバイト経験も実に様々な職種を経験させてもらった。「食い倒れのづぼらやの給仕係」「害虫駆除」「ビール工場の瓶詰め」「深夜営業のコンビニの店員」「ビデオ屋の店員」「ビヤガーデンのイベントのアシスタント」「テキヤのイカ焼き」「交差点での交通調査員」「ライブハウスツアーの運転手兼楽器運び」「吉本新喜劇の大道具の運搬」「牛乳配達」「ペンションの取材」など
もうすっかり、忘れてしまっているものも含めても、本当にいろんな経験をしてきた。
その後、イベント業界で数々のアルバイトを経て、正式にこの業界の会社に入り、31歳で会社を創業し、早30年が経とうとしている。
私が経験してきたアルバイトの数々に仕事の奥深さがあった気がする。
人材不足、若者不足、後継者問題など、今も解決できていないことなどがあり、歳月が過ぎている。
しかしながら、アルバイトをしながら、垣間見た世間は確実に私自身の経験として血となり肉となっていると確信している。
それにしても、北海道は大地が広くて、空が高かったなぁ・・・