「イベントは一期一会」

イベントは一期一会。本番が終わると、仮設会場は撤去され、出演者、スタッフ、関係者も日常生活に戻っていく。束の間の仮想空間である。期間限定だから愛おしく、お客様を魅了するのかもしれない。そして、スタッフも同様に、限りある期間を共有することで、夢を見る。大規模イベントになればなおさらその思いを共有する人が増える。仮設会場が無くなっても、彼らの心の中には、仮想空間は残り続けるのだ。

1990年大阪鶴見緑地を舞台に、「国際花と緑の博覧会」が開催された。私は26歳、まだまだ若手で修行中の身だったけれども、民間パビリオンのスタッフとして参加させていただいた。大和銀行(現りそな銀行)を中心に関西で生まれた企業40社が集まって出展した「大輪会水のファンタジアム」パビリオンの催事ディレクターとして勤務した。4月から9月まで、183日間の会期中、実に様々なイベントを企画、実施した。屋外で、パビリオンに入場するまでの待ち客対策だ。いかに、「待っていることを忘れてもらうか」が最大のミッションだった。ミニコンサートあり、トークショーあり、パフォーマンスあり、またドリンクサービスをしたり、またペガサスをモチーフしたマスコットキャラクターの「てんまくん」は、お客さんの癒しとして、人気者になったものだ。パビリオンも、出展企業としては、1〜2位を争うぐらいの人気になり、知名度が上がれば上がるほど、待ち客対策が重要になったものだ。暑さや、雨、風などの自然との闘いのほか、マスコミが結構殺到してきたので、そこの対策も大変だった。

マスコミ対応で、一番記憶に残っていることが、会期も真っ只中の8月1日の出来事だ。その年も異常な夏の暑さだった。そんな状況下、お客様の前で2メートル以上ある氷の塊をおので削ってキャラクターてんまくんを作る氷像パフォーマンスは、清涼感を伴い、お客様の目を楽しませた。そして、夕方近くに事件が起きた。マスコミのテレビクルーが「てんまくんの着ぐるみを脱ぐところを撮影させて欲しい」と言っている、とパビリオン広報担当。しかし、着ぐるみをお客様の前で脱ぐことは御法度だ。着ぐるみは、人が入っているのではなく、夢や憧れが入っているのだ。汗をかいた、暑いと言っているバックヤードを見せることはできない。着ぐるみに入っているアクターはそこは絶対譲らなかった。テレビクルーのディレクターは「この暑い中、取材してやっているんだから」という態度だ。「このパビリオンをテレビで紹介してやろう」という。だから、「言うことを聞けよ」という無言の圧力。結果は、そのディレクターを怒らせて、取材は無し。その後、館長室に私と広報担当が呼ばれて、事情聴取されたが、双方の立場も理解できるということで、「これからは事前に取材内容を共有しよう」ということで、決着した。

イベントの裏側では、実に様々なトラブルや出来事が起こるものだ、そしてプロとして何を為すべきかを考える。迷っている暇はない、決断力が問われる。

あれから34年……

様々なトラブルを乗り越えた当時のスタッフ、50名あまりの人が集まり同窓会を開催している。2年に1回の継続開催だ。これほど続く同窓会を私は他に知らない。以来、「奇跡の同窓会」と呼んでいる。今も、彼らの仮想空間に当時の思い出がいっぱい詰まっているのだ。

そして、今週末、21回目の「奇跡の同窓会」が開催される。